
分野の垣根を越えた学びを通じて、一つの事象を多角的・重層的に見る姿勢が養われます
生徒に教科の好き嫌いがある理由の一つに、教科間の関係性が見えづらいということがあります。しかし、好きな教科の話題の中に、あまり好きではない教科の知識を使う場面が出てきたら、生徒はどちらの科目の必要性も感じます。
そして苦手教科を面白く感じるきっかけにもなります。また、物理的な見方ができると腑に落ちやすい数学の話題などがあり、横断的な学びは、それぞれの教科のレベルアップにもつながると考えています。
これからは、好き嫌いで物事を見る目を遮断するような人ではなく、視野を広く持てる人たちが社会で求められます。分野の垣根を越えて、異分野の人たちと仕事をする社会で力を発揮するために、これからも田園調布学園は教科横断型授業にこだわり続けます。
教科横断型授業の実践例
中等部2年 国語×美術
中等部2年の国語では、「君は『最後の晩餐』を知っているか」(布施英利 光村図書)という美術作品をテーマにした評論教材を授業で扱っています。この文章は作者が、レオナルド・ダ・ヴィンチの名作である『最後の晩餐』を「かっこいい」という言葉で評価しており、その根拠を絵画の技法である「遠近法」「明暗法」「解剖学」などの言葉を用いて、科学的に説明しているものです。読解をより深めることを目的として、美術科教諭から本文中の用語である「美術の絵画技法」について専門的な説明を行いました。そして実際に「春」「最後の審判」などの他のルネサンス期の絵を鑑賞するなどの活動を通して、美術分野への理解を深めると同時に、文章読解を行いました。文章で表現されていることを実際の目で見る体験を通して、より具体的なイメージとして捉えることができていたようです。このような活動によって、評論文を正確に読解するためには、さまざまな分野の知識を持っておくことも大切であると生徒は気づくことができます。

中等部3年 音楽×数学
中等部3年の音楽の授業ではモーツァルトの「音楽のサイコロ遊び」を題材に創作の授業を行います。当時の生活文化に思いを馳せながら、サイコロの出た目にしたがってChromebookで作曲。できあがった曲を聴き比べながら、和声の働きや「偶然性の音楽」についての学習につなげます。その後、今度は数学の統計や確率の視点で考察します。できあがった曲を数式で分析し、新たな発見が生まれる授業です。



中等部3年 地学×地理×公民
中等部3年の地学では、地震の起こる仕組みについて学習します。地学で学んだ地震の起こるメカニズムをベースに、地理で学習したハザードマップを用いながら地震によって自宅周辺などがどのようなリスクがあるかを考えます。そしてその地震への備えや対策を、公民で学習した知識を活かし、生徒一人ひとりが地方自治体の首長として考えます。地震の起こる仕組みを知り、地震への対策を考えることで、自分事として地震をとらえ、更には主権者意識を育てることができます。

高等部1年 家庭科×生物
理科の知識は家庭生活の疑問に答えてくれることがあります。高等部1年の家庭基礎では、ビタミンCを豊富に含む食材を予測し、見つけるために、身近にあるうがい薬(ヨウ素溶液)を使い、生物で学習した「対照実験」を応用し、緑黄色野菜やいも類の含有量が予想より高く、加熱しても損失が少ないことを明らかにしました。

高等部2年 物理×数学×地理
高等部2年では、 シャボン液を使った実験から、シャボン膜が交わるところ(フェルマー点)について、物理的に捉える(力のつり合い)考え方と数学的に捉える(等角中心・3頂点からの距離の和が最小)考え方を習得する授業を行います。さらに、フェルマー点は化学の分子構造と関わっていたり、地理で学習する「ハブ空港」などにも応用されていたりします。生徒たちはフェルマー点について学んでいくだけで、目を輝かせ、教科を横断的に思考する見方や考え方を働かせていきます。
