学園ブログ

わたしたちの読書、語りました

7月29.30日には、日本子どもの本研究会の全国大会がおこなわれ、本校からはじめて高校生が参加しました。2日間にわたって大人に交じって読書の研究会に参加した生徒もいました。3人とも図書委員会の生徒です。

生徒たちが発表したのは、YA(ヤングアダルト・中高生)の読書のなかで、特にノンフィクションを考える会でした。
そこでは現役の中学生、高校生、大学生がそれぞれの読書体験を自分の言葉で語りました。
フロアーのYAからも「中高生の発言を聞いて感じたこと」や「私の中高時代のノンフィクションとの出会い」などについて活発な意見や素直な感想が出されました。YAのみならず聞いている大人も勉強になる本音トークでした。5月から準備をはじめ7月30日の本番を迎えました。写真は、6月に学校の図書館でおこなった練習風景です。


中高生、大学生の話題提供のあとには、実際に本を作って売っている編集者からお話を聞きました。本づくりや編集の仕事についても興味深かったのですが、何より「その人がどうして本を作り、売る仕事に就いたのか」という個人の体験談をきくのが本当に楽しかったです。本づくりは人がいてこそできる仕事。個人の人生を丸ごと引き受けて、新しい1冊の本が世の中に生まれる。人に歴史あり。本にバックグラウンドありだな、と感じました。
お話を聞いたのは、岩波書店ジュニスタ&ジュニア新書の編集者 山本慎一さんです。山本さんは、何と鍼灸師でもあるそうです。少年時代から「国境なき医師団」に憧れ、「国境なき鍼灸師」となったいきさつを話されたときには、フロアーからどよめきがあがりました。高校生時代にどのように大学選択を考え、勉強する専門を決めていったのか、生きがいとは何か、など中高生にも大人にも聞いて大いに栄養になる内容でした。

生徒は、校内で行われた文化講演会で見たドキュメンタリー映画や監督からのお話をきっかけにして、「CODA(コーダ)」(Children of Deaf Adults=きこえない・きこえにくい親をもつ聞こえる子どものこと)に興味を持ちました。そしてコーダについてもっと知りたくなってノンフィクション作品を読み進んだ経験と、そこから得た(フィクション作品とはちがった)読書の魅力について語りました。当日は、発表にあわせて、図書委員会が作成している図書館報の「読書の栞」や、図書館司書が作成した映画に関するブックリストなども配付しました。こういった図書委員会の活動がわかる資料もつけたところ、多くの方々に読んでいただけたのはうれしいことでした。
映画「私だけ聴こえる」や、「ニューヨーク公共図書館」「わたしは、ダニエル・ブレイク」「長崎の郵便配達」「子どもが教えてくれたこと」など、これまで図書委員会で企画した上映会などに関する映画のパンフレットや、図書館で作成したブックリストなども展示しました。


特に、ご自身もコーダである、五十嵐大さんの『聴こえない母に訊きにいく』(柏書房)や『コーダの世界 手話の文化と声の文化』シリーズ ケアをひらく/澁谷智子著、医学書院)『目で見る言葉で話をさせて』(アン・クレア・レゾット著、岩波書店・本書はちょうど日本子どもの本研究会で作品賞に選ばれました)https://www.jasclhonken.com/%E4%BA%8B%E6%A5%AD-%E5%90%84%E8%B3%9E/%E4%BD%9C%E5%93%81%E8%B3%9E/

の本などは生徒もよく読んで、参考にした本です。これらを展示したところ、よく手に取られていました。この研究会は全国大会のため日本全国から司書や教員、文庫を主催する方々などが参加されていました。
ふだんは知り合うことのできない異なる年代の方や、住むところも離れている人たちが「読書が好き」という共通の興味で集合して、生徒たちがそのような大人・中高生、大学生たちと知り合えた経験は、大変貴重な機会となりました。

以下、参加した生徒からの感想です。
私は今回の分科会で話された「ノンフィクションは出会い方が大事である」という意見にとても共感しました。これまで私は、「ノンフィクション」に重いイメージを抱いていたため、ふだんはどちらかというとフィクションの本を選んで読む傾向にありました。分科会に参加したことで、私自身が読みたい本も見つかり、何よりノンフィクションに対する好奇心がわきました。私と同じくノンフィクションに抵抗を感じてしまう方々にも”読まず嫌い”になるのではなく、”まずは読んでみよう”という気持ちでノンフィクションの本に向き合ってみてほしいと思います。今回は貴重な機会をいただき、ありがとうございました。(Kさん)

私は、ノンフィクション作品について、発表者がそれぞれの視点で考えていることに新鮮な刺激を受けました。と同時に、「本には、今まで知らなかった世界に出会わせてくれる力がある」という見方を持っていることは、皆に共通しているのだと気づきました。また、読んで得た知識や経験をもとに、自分をどう変えていきたいか考えて行動することが大切なのだなと感じました。今回参加したことで、新たな本との出会いもあり、これからさらに色々な本に出会っていきたいと思うことができました。(Tさん)

私は、本には出会うべくして出会う時期があるから、「本にはボクを待っていてほしい」と語った中学生男子の言葉が胸に残りました。

折しも、8月。戦争や平和について知り考える時間を持ってほしいときです。館内では特別企画も作りました。本校の蔵書検索システムからも読書リストで見られます。「きみには関係ないことか!? 戦争と平和を考える2023」です。

https://www.lib-finder.net/chofugakuen/booklist_books?theme_id=124

世の中の事柄はすべて自分とつながっている。夏をすずしく、読書とともに過ごしてください。

(図書館 二井)