学園ブログ

100周年に向けて活動開始 生徒が書の修復師さんにインタビュー

本校は来年2026年に、創立100周年を迎えます。
これにむけて、校内では生徒を中心にして歴史をたどる活動がはじまっています。
芸術マップや「植物図鑑づくり」(仮)などいろいろなプロジェクトが作られつつありますが、今日は芸術マップ作りの最初の一歩を踏み出した記念すべき日です。

学校には、ブロンズ像や石碑、木彫、書、絵画などさまざまな作品がありますが、まず「書」を取り上げます。
本校には初代校長 川村理助先生の書かれたものをはじめとして古い書がたくさん残されています。
「捨我精進」の書は、和紙に墨書きされていますが、経年劣化により表面が割れ、傷みが激しく修復が必要な状態でした。
このたび株式会社誠堂様が事業提供している京都工房に修復を依頼しています。

既に修復は始まっています。このたび文芸部の3人が、京都の工房とズームでつなぎ、
修復の作業工程や、作業で工夫しているところ、はたまた作品に隠された秘密などをインタビュー形式で伺いました。
昭和初期に書かれたこの書は、入学式や卒業式では講堂の正面に必ず掲げてあるものです。
修復をしている作業中に判明した事実に生徒は驚いていました。

それは、書の一部が剥落(はくらく)した折、おそらく校内でのりで修復してしまった形跡が見つかったということです。
しかも、表裏を逆にして貼ってしまっていたので、この度の修復の際には、まず間違った修復をきれいにはがすところからする必要があったこと。

元の紙を取りのぞき、水で洗うそうなのですが、もともと書かれていた墨書きの書が消えないように、膠(にかわ)で塗り剥落止めをする、ということでした。

もう一枚は理事長室に飾られていた作品です。「形骸両つながら釈け、意気交流れ これを愛といふ」と書かれていて、菜根譚からの一説を引用して、昭和2年の元旦に川村先生が書かれたものだとされます。

この作品は、原本の状態から修復するタイミングではないということで、今回は複製を作成することになりました。今後、複製を展示して原本は厳重に保管することとなります。
複製は顔料を使用したプリンターで作成し、原本に近い色やデザインで額装を行う予定になっています。

生徒の質問では、工房はどんなところかや、作品が学園に戻ったときにはどのような保管方法が理想的なのかなど実際に役立つことを多く聞きました。

特に保管方法では、やはり湿度を保つことが最も大切、と言われました。今私たちはクーラーを使う生活をしています。作品は紙(和紙)や木(額がある場合)でできています。

紙にとっては温度、湿度のアップダウンがあることが一番厳しいということ。紙にとっては湿度50パーセント、室温27、28度くらいが快適なのだが、エアコンなどを使うことにより乾燥する状態が続くと紙は縮もうとする。耐えられなくなると紙が割れてしまうそうです。また、虫も大敵なので虫の来ない環境にすることが大事とのこと。保管する場所は本当に大切だと知りました。

ほかにも、なぜ修復師になったのかなど、仕事についたきっかけなどもお話しいただけました。江戸や明治、大正時代の作品、教科書に載っているような作品も修復しているとのこと。いま、「古い」の基準が変わってきている、と語られていて、そこに、修理の責任者としての気概とやりがいが感じられました。

これらのインタビューは、本校でお世話になっているウエマツ様や、株式会社 誠堂様にお世話になり実現したものです。いずれも工具や文具の販売をはじめ、文化財や美術作品の修理や複製、美術印刷などを手がけている会社です。

貴重な機会をいただきました。

8月には、川村先生と初代理事長西村庄平先生の肖像画を修復してくださっている工房にインタビューをする予定です。

(担当 長峰・二井)