学園ブログ

被爆80年「ナガサキの郵便配達」~朗読と音楽と映画で紡ぐ~

8/9(土) 長崎の原爆の日に、本校の図書委員の生徒2人が朗読会に参加・出演しました。

被爆80年祈念「ナガサキの郵便配達」~朗読と音楽と映画で紡ぐ~です。私たちが参加するのは今年で4回目です。

これは「ナガサキの郵便配達」というノンフィクション作品をもとにした朗読です。今年は戦後80年ということもあり大きな会場(日比谷図書文化館)で、しかも俳優の方々と共に取り組みました。

阿川佐和子さん、中江有里さん、長谷川真弓さん、松田洋治さんら、そうそうたるメンバーのなかに高等部2年の2人が参加しました。

↓練習風景(5月から昼休憩や放課後等の時間を使って練習をしていました)

これは、直前の打ち合わせのようす。

内容は、ナガサキで被爆した谷口スミテルさんの一生を描いたドキュメンタリーです。

1984年に『The Postman of Nagasaki』という題で英国人作家ピーター・タウンゼントさんが執筆しました。原爆とその後遺症がいかに恐ろしいかということを世界に発信する内容で、英国人だからこそ書けた内容だと言われています。日本語版は長らく絶版となっていましたが、2018年に再版され、スーパーエディションから発行されています。再版された日本語版は、「平和の教科書」ともいえるものです。『ナガサキの郵便配達』を通して、核兵器と人間は共存できないことを感じ、考えることができます。今回は、その本から抜粋したスクリプトを用いて、朗読と音楽で紡ぎました。

佐藤洋平さんが作曲された「ナガサキ組曲」は、クラシックギターが主旋律を奏でます。

今回は、ピアノに加え、小津安二郎監督の映画音楽を担当した作曲家齋藤高順さんのご子息を中心としたサイトウ・メモリアルアンサンブルとともに演奏・朗読をしました。これまでにも増してボリュームのある重厚な響きでした。

ゲストの方にサインもいただきました。(いまカウンターに展示中です)

会場には200人近くの方が見に来て下さって、ほぼ満席でした。

生徒たちは、第1章と2章が担当だったこともあり「いきなり出番!」という緊張の始まりでした。しかし、かなり落ち着いて堂々と語ることができました。

 

実は今回参加した高等部2年生たちは、6月に学習体験旅行で実際に長崎を訪れています。

各々が現地で被爆者から聞いた話を胸に、声でも表現できたのではないでしょうか。

 

以下は生徒の感想です。少し長いですが読んでみてください。

Aさん

私は、当時の日本と世界の情勢や日本が戦争へ向かうまでの道のりの部分を朗読しました。重苦しい内容が増えてくる部分ですが第三者の視点で語られているので苦しさだけが全面に出ないようにしました。また、私が担当した場面は話の中の主人公であるスミテルがまだ幼い時期なので、無邪気さを出すなど工夫をしました。本番では終始緊張は大きかったのですが、練習を重ねてきたので、大きなミスもせず読み終えることができました。読んでいる最中も安心した気持ちが大半を占めていました。200人というたくさんの人の前で一人で何かをするという経験はあまりしたことがなかったので貴重な経験になったと思います。

 

Iさん

今回の朗読会は、私にとってとても大切な経験になったと思います。
私は朗読会の1番はじめの、長崎で過去に起こった歴史、例えば海外との貿易と共に発展してきた街の様子やキリシタンの弾圧、トーマス・ブレーク・グラバーという人物についてなど、長崎という地域の特異性について朗読しました。
朗読する前は多くの観客の前で朗読をするということに加えて、自分が1番最初に朗読をしないといけないことに緊張して、失敗しないか不安になっていました。しかし、1度舞台の上に立つと「私の声で長崎の街の様子や歴史を伝えられるのはなんて光栄なことだろう」と思い始め、会場の空気感を少し楽しんでいたかもしれません。
安土桃山時代、政府が多くのキリシタンを殺害した事件の部分を読んでいる時、客席から息を呑む音が聞こえた気がして、本当に私の声が届いている!と思い、嬉しくなりながら読んだことが一つの思い出です。客席にいる一人一人が私の声に耳を傾けている、そんな状態を初めて味わい、楽しさと高揚感と少しの緊張でドキドキしながら読んでいました。
公演が終わった後、実際に客席で朗読を聞いていた方に「すごく良かった」「よく伝わってきた」などお褒めの言葉をいただき、とても嬉しかったです。
また、共演した俳優さんや音楽隊の方々の演奏も素晴らしかったです。舞台裏から聞く朗読や音楽は、客席から聞くものとは迫力が段違いに異なり、心に直接響いてきました。プロの方々の朗読は聞いている人に情景を想像させるだけでなく、自分がまるでその場にいるかのように錯覚してしまう程感動しました。
朗読をする前の不安感。朗読中の、観客の方々の視線が集まっている緊張感。朗読後の達成感と安心感。全てが新鮮で、どの瞬間を切り取っても貴重な時間となりました。

 

 

 

また今後、11月22日(ピーター・タウンゼントさんの誕生日)には、長崎でもこの朗読・演奏会を行うそうです。お近くの方は行ってみてください。また、長崎にお知り合いがいたらどうぞ紹介してください。

当日は原書の展示や、日本語版の販売、紹介もありました。

左端が原書(英語)、右が絶版になった日本語版。

現在、日本語版は書店に注文すると購入することができます。『ナガサキの郵便配達』スーパーエディション発行 で注文できます。

 

今年新たに、フランス語版とロシア語版も出版されます。(オレンジ色がロシア語版)並べると装丁の色違いが鮮やかです。

会の最後には、ウクライナから日本に避難を余儀なくされている留学生から、ウクライナ戦争の現状を語る時間もありました。

 

まだまだ終わらない戦争。

いよいよ8月15日も近づきます。

身近なところで、一人ひとりが平和な世界の実現を考える時間をもつことができるよう祈っています。

(図書館 二井)