学園ブログ

酒田の自然と復興(中等部2年体験学習)

昨日と今日に分けて、酒田の環境や水害からの復興について学ぶプログラムを実施しました。

朝食後、生徒たちは大沢コミュニティセンターに移動して、合同会社COCOSATO代表の阿部彩人氏の講演を聴講しました。阿部氏はドラマ、楽曲などエンタメコンテンツの製作の経験を通して、酒田の魅力を発信し続けてこられた方です。また、2024年7月に酒田市に甚大な被害をもたらした豪雨災害からの復興にも尽力され、現在は酒田市大沢地区に住みながら、地域おこしをされています。人口が減少していく酒田市の地域づくり、地域おこしには「ないものねだり」ではなく「あるものさがし」をし、それを磨くことで、地域の持つ特徴や絆を(楽しく)発信することが大切だと語られました。生徒たちも真剣にメモを取りながらお話を聴き、質問も多く出ました。豪雨災害の時は、阿部氏も大変落ち込まれたそうですが、大沢地区の方々と話をする中で、どの方も後ろ向きなことを言わなかったことに逆に励まされたというお話が印象的でした。

続いて、酒田市北部農民センターに移動して、佐藤尚人氏の『刈屋梨と日向荒瀬反乱の歴史』についての講演を聴講しました。

佐藤氏は、これまで、刈屋地区では、川の氾濫に伴い肥沃な土が鳥海山から流れ出て、その土が梨の味に影響していると考えられていました。しかし、昨年の豪雨災害後に、検土を行ったところ、土自体に栄養分が含まれているのではなく、肥料をつかむ力の強い土が多い、という新たな発見があったと語られていました。

災害からの復興には、まだまだ時間がかかりますが、それをマイナスに捉えるのではなく、これをきっかけとして、より美味しい梨づくりのためにできることを日々試行錯誤されていることがわかりました。自然との共生を図りながら、農作物を育てていく者としての熱意を強く感じることができました。農作物一つをとっても、そこには生産者の努力や強い思いが詰まっていることを再確認し、自然と共生し、生産に携わることの大変さを学ぶ貴重な機会となりました。

昼食後、牛渡川・丸池周辺の散策を行い、鮭の孵化場を見学しました。鳥海山の湧水を水源とする美しい川の流れに乗って、毎年多くの鮭が、卵からかえったこの場所に戻ってきます。川の水は澄み切っており、鮭の他にもヤマメなど多くの魚が泳ぐ様子も見ることができ、生徒たちは喜んでいました。孵化場には多くの鮭トバが干されていたものの、今年は遡上する鮭の数がとても少なくなってきているそうで、組合の方が危機感を募らせていました。海水の温度上昇など地球規模の環境変化が喫緊の課題ですが、それを肌で感じる瞬間でした。

そして最後にJA庄内みどりみずほカントリーエレベーターを見学し、米の乾燥、貯蔵、調製、出荷の仕組みについてお話を伺いました。また、乾燥・調製機能のみの「ライスセンター」との違いについても学習しました。施設には米の精米・貯蔵のための大規模な装置があり迫力満点でした。米の集荷までのシステムについて詳しく知る機会は初めての生徒も多かったようです。

酒田の地で美しい自然や生態系、そして人々の暮らしを感じる中で、自然災害など環境問題がもたらす影響に一人ひとりがどう向き合えばよいのかを真剣に考えさせられました。また一方で、酒田の人々のつながりや、農業・漁業に対するプライドに感動する一日ともなりました。(引率教員 後藤真理子 長岡敬佑)