ウクライナとのオンライン交流に向けて~事前学習その2~

いよいよ2月18日に迫ってきたウクライナとのオンライン交流。それに向けての「事前学習その2」を2月10日(火)の放課後に実施しました。今回も『13歳からの地政学 カイゾクとの地球儀航海』の著者であられる日本経済新聞社編集委員兼解説委員の田中孝幸様をお招きし学習会を開きました。

今回はまず、本校生徒から田中様へいくつか質問をさせて頂きました。まずは「13歳の地政学を書こうと思ったきっかけなどがあれば、教えて欲しいです。」という質問でしたが、「家で子どもたちに国際社会についての話をした際に興味を持ってくれたので、一緒にそれに関する本を買いに行ったんです。しかし、思ったより紹介したい本がなく、私が書こうと決意しました。」と答えてくださいました。生徒たちから「お~」と感嘆の声がもれました。また、「13歳の地政学で一番重要な章はどこですか」という質問に対しては、「最終章のカイゾクからの手紙の部分です。深い思い入れがある章ですし、自分の子供に伝える気持ちで書きました。」との答え。また生徒から「お~」と感嘆の声がもれました。本を書くということの大変さ、面白さについても教えて頂きました。
その後、「私の中でアメリカの現大統領について、ニュースで見る限りあまり良い印象がありません。それなのに2回もアメリカ国民に選挙で大統領に選ばれた理由を田中様はどのようにお考えですか。」という教員側も興味の湧くような質問が出ました。田中様は「アメリカの現大統領は、実は世論に一番敏感な方なのです。彼は世論を細かく分析し、自分がどのように発言すれば、どのように振舞えば支持されるのかをよくわかっている。」とのお答え。これには生徒たちも驚いた様子でした。また、「中学生が地政学について学ぶメリットはなんですか。」という質問には、「世界を見ることの重要性を学べます。そして世界は実は訪れてみないと分からないことばかり。私はロシアにも駐在していましたが、その時にシベリア抑留の後にそのままソ連に残った日本人を取材しました。普通に考えれば日本に帰る選択肢をすると思いますよね。ですが、戦後間もないころは日本よりもソ連のほうが経済状態も良く、またソ連は戦争でたくさんの男性が亡くなりました。だからその方はソ連の女性から注目されたそうです。負の側面にしか人は目がいかないこともありますが、実はその逆の側面も必ずあります。そういったことを地政学を学ぶと感じられるようになります。」とお答えいただきました。田中様のお答えは記者として長く現場で過ごされたからこそ出てくるものばかりで、生徒も教員も感嘆、驚き、納得、感動の嵐でした。

前回はオンラインでウクライナ在住のイローナ・マケドン様からお話をいただきましたが、今回は国際公務員として活躍されている結城秀美様とオンラインでつないでいただきました。結城様はアジア人女性としてはじめて国際刑事警察機構(ICPO/INTERPOL いわゆるインターポール)に正職員として勤務された方です。現在は国連薬物犯罪事務所(UNODC)管理官としてテロ対策のお仕事でモルディブに出張中とのこと。お忙しい中にもかかわらず、結城様から本校生徒に「国際機関で働くということ」などについてお話をいただきました。まず、国際機関で働くには「メンタルの強さ、体力、そして人間力」が必要だと教えてくださいました。特にメンタルの強さは重要とのことでした。結城様自身、大学院時代の教官にテストでの不正を疑われた経験があるそうです。アジア人というだけで差別され、不正を疑われる…大変悔しい思いをしたそうです。さらに、インターポール時代もやっかむ人たちから嫌がらせを受けるなど、そこでも相当の苦労をされたとのこと。それらの経験を乗り越えることで、折れない心を鍛えていったとのことでした。そして目指すものがあるからこそ、諦めずにやってこられたと仰っていました。Be the change that you wish to see in the world「世の中に変化を求めるなら、あなた自身がその変化そのものに成りなさい」という言葉、そして主体性を大切に生きてきたとのこと。本校生徒にも大切にしてほしいとお言葉をいただきました。
結城様は日本の外に出て日本の良さに気付いたとも仰っていました。例えば日本のパスポートは国連職員のパスポートよりもビザなしで渡航できる国が多いとのこと、そして日本が長く援助してきたODAや日本企業などの活躍で、日本への信頼は相当高いと感じたそうです。
またインターポール時代に犯罪分析官として、国際的な犯罪の解決に関わり、犯罪者を逮捕するオペレーションにリアルタイムに参加された経験などもお話しくださり、生徒たちは食い入るように話を聞いていました。本校生徒の「世界が分断に向かう中で、国際機関で働く意味は何ですか。」という質問には、「2026年は年初から大国の大統領によって国際情勢が混乱しました。しかし、私たちは世界の情勢や大国の思惑にとらわれずに、粛々とやるべきことをやっていくだけです。大国があるファンドから手を引くといったとしても、それで支援の流れを止めるわけにはいかない。私たちが持っているリソースや協力してくれる機関やNGOを探し、支援を続けていきます。何があっても粛々と働く、それが世界にとって重要だと思っています。」と答えてくださいました。
本当に学び多い事前学習となりました。これもひとえに日本経済新聞社の田中孝幸様のお陰です。大変ありがとうございました。また、海外から参加してくださったイローナ・マケドン様、結城秀美様にも心から感謝申し上げます。来週のウクライナとのオンライン交流で本校生徒がまた多くのことを感じ、考えることを祈っています。(国際交流係 山口)
<生徒の感想から>
「結城様のお話を伺い、自分の将来を決めるのは自分自身なのだということを改めて強く感じました。結城様の生き方を知り、まだまだ自分の知らない世界があるのだと驚きました。知らないことを知っておかないと、知らず知らずのうちに自分で将来の選択肢を狭めてしまってるのではないかと気付かされました。また、一歩を踏み出す勇気や自分を信じること、死にものぐるいで努力することの大切さを学びました。出会いや運、ご縁ではなく自分の信念に基づいて自分の手で掴むことのパワーを感じました。華やかな経歴や力強い実力を得るまでの過程に差別やいじめもあったと聞き、自分に置き換えたときに乗り越えることができるのかと考えてしまいました。結城様のアドバイスを参考に、自分が最も情熱をかけられることを見つけ、その目標に向かって進んでいきたいです。まずは、来週のウクライナ交流会に向けて、本校と交流して良かったと思ってくれるようにしっかりと準備をし、交流を深めたいと思います。また交流を経て自分の中にも新しい課題や問題意識が得られるように頑張ります。」
「今回の講義で、結城さんの「国際機関として世界の情勢に関わらず支援を続けることが大切だ」という言葉が特に印象に残りました。この言葉から、国際機関で働く一人として、困っている人のために決して諦めないという結城さんの強い決意を感じました。また、お話の中でおっしゃっていた「諦めない心」は、将来について考える際にも、自分の弱い部分を乗り越えるために必要な力だと思いました。」
「お仕事が私達学生と大きく異なっているため、貴重な経験談を聞けたことはもちろん、その時の心情などもお聞きできて本当に参考になりました。結城さんの今回のお話にとても勇気付けられました。私自身、女性として世に出ていくことや、社会で通用する英語を身に着けて言うことに不安があったのですが、挫折や周りからの圧力に負けず、頑張ろうと思いました。」