卒業生座談会
- 学園生活

新聞社等メディア系のお仕事をしている卒業生による座談会を開きました。今回集まったメンバー以外に、朝日新聞社、NHK等にお勤めの卒業生もいます。みなさん、中高時代の体験から記者を目指すようになったとのこと。100周年を来年に迎える今、在校時を思い出しつつ、これからの学園についても語ってくれました。
今回は、4名(うち1名Zoom)参加のうち、毎日新聞社が3名とたまたま同じ会社が重なりましたが、同窓生という認識はなく、この座談会でお互いに知ったそうです。今回は、体験学習・学習体験旅行について、と調布学園が100周年を迎えるにあたり、今後、どういう生徒を育てることが大切だと考えるか。について伺いました。
参加者
毎日新聞社 社会部 記者 井川加菜美 ハフポスト 日本版 記者 國崎万智
毎日新聞社 くらし科学環境部 記者 信田真由美 毎日新聞社 学芸部 記者 平本絢子
聞き手 教頭 兼子尚美
100周年記念サイト「調布の想い出」にもコメントがありますのでご覧ください。
〇体験学習・学習体験旅行について
平本 私たちの頃とどのくらい変わっていますか?
兼子 中1は時期、場所ともに3年前に変更し、中3も関西のみから、関西・台湾・韓国からの選択制と変わりました。中2の山形県酒田ファームステイ(現在は「酒田ふるさとステイ」)と高2の九州学習体験旅行は、大きくは変わっていません。「探究」の学びを入れることと、九州は高1から高2に変更したことと長崎・熊本間でコース選択制を導入したことが変更点です。
平本 水俣のことは、自身の就職活動でのエントリシートにも書いたほど、印象に残っています。以前は、原田正純さんにも直接話を伺えていました。今考えると、これは、大変貴重な体験だと感じます。
井川 『苦海浄土』(石牟礼道子著)の「ゆき女聞き書き」を国語の授業で、熱心に読解したのをよく覚えています。また、NHKの古いドキュメンタリーを見たことも深く印象に残っています。学校でしっかり学び、最後に現地に足を運んだ時は感慨深かったですね。
國崎 水俣病の公式確認60年の頃に水俣に行った際、胎児性水俣病患者とその家族にお話を伺いました。ある母親が、胎児が胎盤を通じてメチル水銀を吸い取ってくれたおかげで自身や家族が健康でいられたとして、その子を「宝子」と呼んだエピソードが知られています。私が出会った母親も、高齢になる子を残して自分が先にこの世を去ることの苦悩を語っていました。当事者の方々の言葉を直接聞くことも、どんどん難しくなってきており、今しか聞けないお話は多いと感じています。
兼子 水俣での講演者の方も世代交代がすすんでいます。以前は杉本榮子さんのお話を伺っていましたが、最近はご子息の肇さんから、子供の立場で、当時感じたことについてお話を伺っています。今年は坂本しのぶさんの講演でした。長崎でも、被爆者の方のお話を夜ではなく昼に変えるなど、高齢化とともに負担のない方法に変えています。
井川 熊本にはハンセン病の国立療養所もあり、歴史資料館ではハンセン病に関わる歴史や課題を知ることができます。形を変えながらも、実際に現地に行き考える機会を大切にしてほしいです。
兼子 今、現在でも戦争が行われている中で、歴史や現在の情勢を知る必要があります。一人ひとりの感じ方に配慮しつつ、行事でこういう取り組みをするのはとても大切だと感じます。
〇調布学園が100周年を迎えるにあたり、今後、どういう生徒を育てることが大切だと考えるか。
井川 ジャーナリストの田原総一朗さんがさまざまな識者の方と対談する企画に少しだけ関わる機会がありました。その中で論議されていたのは「正解のない問題」にどう挑むかということ。大学受験についても、総合型選抜の比率が大きくなる中で、探究型の学習、自分で問いを立てて考えていくことが求められつつあると感じます。もちろん通常の勉強も大事ですが、探究する力がより求められていると思います。
國崎 「成長しなくてはいけない、誰かの役に立って社会に貢献しなくてはいけない」とい う圧力があり、それによって若い世代が自信をなくすケースがあるように思いま す。社会貢献に喜びを感じる人はそれでも良いし、誰のためになるかわからなくても、自分の心が動くことを徹底的に追い求めるのも素晴らしいと思います。結果的にその姿がまわりまわって誰かのためになるかもしれませんよね。生徒の感性と多様性を大切にする学校であり続けてほしいです。
兼子 そうですね。また、芯のある人が求められるとも聞きますが、どうすればそのようになると考えますか。
信田 最初から「これ」と決めるのではなく、いろいろやっている中で好きなことを見つけるので良いと思います。私の場合は大学院まで学んだ生物学が自分の軸になっていますが、高校時代は文理を決められず、文理融合の大学を選びました。今取り組んでいる環境問題についても、文理両方の知識が必要です。例えば、台風制御などを検討する際にも文理横断の知恵が求められます。いろいろな体験を通して、やりたいことをゆっくりと見つけていけば、自分の芯を持つことにもつながってくるのだと思います。
兼子 確かに、学校ではいつまでに〇〇を決めましょう、ということが多いので、こういう姿勢が大切だと聞くと、生徒は安心するかもしれません。
平本 自身の学生時代の経験を考えると、やはり好奇心を肯定する、多くの経験をすることは大切。学習体験旅行などの行事で、そういった経験が醸成されました。また、中高6年間は密な時代であり、その中で突出するのが嫌という気持ちはわからないでもないですね。ただ、いろいろな年代と交流して、外の世界を知ることはとても大切です。失敗をすることも大切。新人担当の友人の話では、失敗したくない、優等生的に周りの期待に沿うようにふるまう若者が増えていると聞きます。自分の本音が出せないようなのですね。思いっきり失敗をしても大丈夫。せっかく気心の知れた仲間の中にいるから、ぜひチャレンジしてほしいと思います。
兼子 失敗を恐れないためには、周りがそれを受け入れる素地が必要ですよね。本校だけでなく日本は全体に同質性が強く、外れることに対して不安になる気持ちもわかります。そういった中で受け入れる姿勢を持つにはどのようなことが必要でしょうか。
平本 外との接点、あるいは同年代の学校同士の交流があるとよいと思います。似た環境で、でも異なる生徒との交流が効果的ではないでしょうか。同じクラスなら失敗をしたら次の日どうしよう、と思うかもしれませんが、外部の人ならそれが軽減されます。
井川 別の居場所づくりはとても大切だと感じます。自分自身も中学の時に、地元で演劇のワークショップに通っていました。学校とは別のコミュニティに属していたのが良い思い出となっています。
兼子 現在、なでしこ祭や、学習体験旅行で、他の学校との交流なども行っています。小学生の模擬店の手伝いボランティアに多くの生徒が参加をして、支援団体からお褒めの言葉をいただいたこともあります。様々な生徒、それぞれに寄り添いつつ自己実現のサポートをしていきたいと思います。
本日はありがとうございました。
100周年記念特設サイト「調布学園の想い出」にいただいたコメントも掲載しています。ぜひご覧ください。
(まとめ 教頭 兼子尚美)