学園ブログ

表現するのは、おもしろい

文芸部の活動のひとつをご紹介します。
先日、プロの声優でもある渡辺克己先生に来校いただき、朗読の指導をしていただきました。
渡辺先生は、土曜プログラムでも「自分を表現しよう」講座を受け持っていただいています。
今回は、表現することに興味のある生徒を募ったところ、もと演劇部やミュージカル研究部の高等部2年生などもあわせて総勢7名が集まりました。

いつもは読んだり書いたりするのが大好きな文芸部ですが、表現するのは慣れていないため、最初は四苦八苦しました。
生徒はそれぞれ自分が読みたい本を持ち寄りました。
彼女たちが選んできた本は次のようなものでした。
『ティリーのねがい』フェイス・ジェイクス、『ソネット集』シェイクスピア、『花園の思想』横光利一、『ハリネズミの願い』トーン テレヘン、
『人質の朗読会』小川洋子、『堕落論』坂口安吾、『魔法の声』コルネーリア・フンケ

自分の持ってきた本の中の1節を生徒は渡辺先生の前で朗読し、その後、アドバイスをたくさんもらいました。
そこで、教えていただいたことには、このようなものがありました。

・どういう気持ちが裏側にあるかによって、ことばは変わる。

・一行のことばの向こう側にあるものをあらわすこと。

・全体を滑らかに言うことではなく、単語一つひとつをどれだけ深く感じているかが大切。

・意味の塊を考えること。
・言葉を動作に落とすこと。二次元のものを三次元で再現すること。
・ことばには、方向、重さ、深さがあること。

例えば、「大きい」とひとことで言っても、縦に大きいのか、横に長いのか、深いのか、によって言い方は変わる。
・言葉を空間に出す、という意識を持つ。

印象的だったのは、「本は地図」という言葉でした。「本は地図。この本を使って、自分という感性をどう開放するか。」
ここに朗読のエッセンスが詰まっているような気がしました。

「きっぱりと忘れてくれ」という1文を読むにしても、主人公が本当に自分のことをもう忘れてほしいと思っているのか、実は本当は忘れてほしくないのにわざと気を引くために言っているのか、によって声の質やトーンは全くちがってくる。末尾を上げるか、下げるかだけでも、主人公の心持ちを表すことができると知って、生徒たちは深くうなずいていました。
朗読は、読解、追体験、作者のことを考えること。文字を手がかりにして自分がどう追体験するかをまず感じることが肝要だと知ったようです。 

(文芸部顧問 二井)