学園ブログ

どん兵衛から知る異文化! 大学での学問をひらく

中等部3年生と高等部1年生は、本日「1日大学生」になりました。というのは言い過ぎで、大学の先生からの特別講義を受けました。


19の大学から先生方をお迎えし、「大学での学問」とはどのようなものかを伝授していただきました。ほんの65分間でしたが、生徒は進路を考えるための大変貴重な機会を得ました。
内容は、心理学、法学、社会学、音響工学や都市工学、生物学。それに、薬学、数学、生命科学、看護学など。さまざまな分野のスペシャリストが来校され、中学生や高校生は自分の興味に応じて各々講座を選びました。

比較・国際教育学の講座では、東京外国語大学の岡田昭人先生が異文化コミュニケーションとはどのような学問かいろいろな事例を通して紹介されました。「異文化適応のプログラム」では、外国に行った人が感じる心理状況をグラフを使って紹介されました。岡田先生自身2年間アメリカに滞在されたそうです。長く外国に行ってから日本に帰ってきた人は、「知らなかった日本文化に気づいて、傷つくという逆カルチャーショックを受ける」といいます。それがこのグラフのW型の二度目の底をあらわしているそうです。これを聞いて私も納得しました。(私も学生時代に約1年間米国にいたことがあり、帰国後感じた気持ちに今初めて名前がついて、腑に落ちたのです。比較・国際教育学とはこのようなことも勉強する学問なのですね。)

岡田先生は、終始生徒の名前を「あやのさん」「まこさん」などファーストネームでよび、絶えず問いかけながら授業されました。その中で生の声をすくい上げながらも和気あいあいと進めていくテンポのよさに生徒も引きこまれていました。

次に異文化コミュニケーションを妨げるものとしてステレオタイプの数々を紹介されました。

中でも、インスタント食品の「どん兵衛」を2つ並べてどこが違うかを生徒に見つけさせた場面は興味深いものでした。

ステレオタイプとは何か、という点で、関西・関東の違いを見つけ出すクイズでした。
おなじ「どん兵衛」でもよくみると表示にEとWの違いがあるのです! そしてE(関東)とW(関西)では、味が違うのだといいます。ほかに黒人と白人、関東人と関西人など、国、人種、地域によるステレオタイプの例を問いかけられました。
「スキーマとは何か」や、ステレオタイプを使ったジョークも。
「ステレオタイプとは何だろう」という岡田先生からの問いかけに、ある生徒は「色眼鏡」と答えました。
そのタイミングで、岡田先生はなんと持参したマイサングラスを装着。
「こうするとどう見えるでしょうか」と言わんばかりです。

生徒たちは笑いながらもステレオタイプとは何かが、妙に腑に落ちたようでした。


授業時間が半分過ぎたら「伸びをしてください」と先生から声掛けが。

生徒も教員も全員で伸びをして、身体的にもリラックスしたところで後半戦です。

言葉によらないコミュニケーションのあり方、コンテキストとは? などを話されました。

日本は高コンテキスト文化であるのに対し、ドイツ系スイス人は低コンテキスト文化。だから日本では「話さなくても察してほしい、背中で語る」ということがあります。空気を読めないと「KY」などとあらわされてしまうのもこういった背景のせいです。が、これは、他国ではありえないことです。先のドイツ系スイス人の場合だと、正確な指示・合理性が何より重んじられる文化なのです。


非言語コミュニケーションの例ではキティちゃんやミッフィーも登場しました。岡田先生からの問いは、
「キティは口がない。ミッフィーは口がある。口のあるなしが違うのはなぜ?」

キティは、どの気持ちの人にもよりそえるように、見た人の気分や状況、感覚になじむように口が描かれていないそう。一方、ミッフィーはオランダ発。オランダはマルチカルチャー(多文化)なので、口元の表情がはっきりしていないと表情が明確に読み取れない。だから口がある、のだそうです。

普段親しんでいるキャラクターが次々登場し、楽しみながら異文化や非言語コミュニケーションが学べることに生徒も驚いている様子でした。
その他にも、時間の感覚の違い、沈黙や会話における間のとり方には意味があること、国や文化、民族によるコンテキストの高低差等多くを知りました。
岡田先生からの「(今日の授業は)全部理解しなくても感じてください」という言葉が印象的でした。
問われたら、とにかく発言することが大事。
コミュニケーションの極意として「絆」という言葉の意味も知らされました。
絆には、長い糸を半分に折るという語源があるそうです。
長い糸の一方を動物が、もう一方を人間が持っていたとします。自由が利かないので、あなたは半分なにかを失ったように感じるでしょう。自分が不自由を感じたら、同時に相手も不自由を感じているのです。それでも一緒に進んでいく。それが「きずな」というものです、と紹介されました。
ほかの国を知りたいと思ったら、言語だけでなく言語のほかの部分も勉強しないといけない。「異文化」という言葉がなくなるまで我々は努力をしていこう、と力強く話されました。
そして最後には、サプライズが。


今日の講義会場が音楽室、ということが幸いし、最高のプレゼントが贈られました。
それは岡田先生ご自身による弾き語りの「イマジン」でした。
世界中がつながるように……。いつか、「異文化」という言葉がなくなり全人類が仲良くなるように、とみんなでうっとりしながら聞きほれ、気持ちを一つにした幸せな時間でした。
早く大学生になりたい、と思った生徒も多かったはずです。

(ブログ担当 二井)