学園ブログ

高校生直木賞に参加 全国32校の高校生と読書会

高校生直木賞に高等部1年生が参加しました。本校は3年連続の出場です。

中学生のころから参加したいと思っていたこの生徒は,去年は応援席にいました。

本来は4月の連休におこなわれるはずだったこの大会ですが,感染症拡大予防のために8月23日に延期されました。

今回は,都内の高校5校のみがリアル参加し,他の学校27校(北海道から福岡県までの全国から参加)総勢32校をつないだ大読書会となりました。

オンラインによる開催は初でした。http://koukouseinaoki.com/choose/index.html

高校生直木賞とは,高校生の目線で直木賞を選ぶという取り組みで,今回は第7回目の開催でした。

http://koukouseinaoki.com/

主催者からは「本当ならば表情でわかることもオンラインではわかりにくいので,リアクションを大げさにして下さい」という提示もされつつ,選考会はすすみました。今回の候補作は以下の通り。

「高校生直木賞」とはそもそも何か,という意義をも問う,よい質疑応答を交えながら議論が進んだことが印象的でした。

大まかに,次のような意見が出ました。

・未来を担う高校生に必要な文学を選ぶべき。

・次の読書につながるような物語が選ばれるべき。

・読みやすいかどうかだけではなく,たとえ高校生の今はわかりにくくても,良いものは良いと提示することが必要。

・普段小説を読まない高校生に読ませるため選ぶべき。

また,そもそも「難しい」や「読みやすい」は主観的だから選ぶ観点として重要視しなくてよいのではないかという意見など次々と提案されました。その気迫は,大人たちが圧倒されるような熱気にあふれていました。

また,小説の内容だけではなく,装丁や帯についても厳しい指摘をする高校生もいました。

しかもその理由は,しっかりと小説の読みを基礎としているからこそ,周りの人にも説得力を持って伝えられていました。

本の読解には,様々な形があること,想像力を鍛えられることなどを体感した4時間。

最後に参加校32校が1票ずつ投票して,『渦』(大島真寿美,文藝春秋社)が第7回高校生直木賞に決定しました。

他者の意見を聞きながら自分の意見も構築していくこと,人の言葉のなかに腑に落ちる言葉を見つけることの奥深さを知った高校生直木賞でした。互いの飛沫は飛ばないけれど,想像の翼は羽を広げてとび,しかもきちんと互いに結びついていた感覚を誰もが得ていたと私は感じました。

「読書」という行為とはどういったことかとか,「本」をめぐる周りのあり方はいかにあるべきか,など高校生同士が安心して思う存分語れる場でした。ふだん気恥ずかしくて本を読むことについて真面目に話し合うことなんてできない,と思っているあなたは,ぜひ来年この場に出てみませんか?

ただ単に消費される物質としての本ではなく,本の後ろにある「文化」にも思いを馳せ,思いを話し合える場所です。出版や読書,物体としての本を慈しむ気持ちや態度を披露したり,確認したりし合えました。今回は特に,文楽やアイヌが主題となった本が候補作にもあったことから,日本語や日本文化,多様性にも話は波及しました。

一度も直にあったことのない人たちなのに,5冊の候補作を通じて心がふれあう時間でした。

この経験は,これからにもつながっていくことでしょう。

https://books.bunshun.jp/articles/-/5899

(図書館 二井)