学園ブログ

「長崎の郵便配達」川瀬美香監督を囲んで 被爆の悲劇 私たちが伝えていく

7月22日の午後、映画「長崎の郵便配達」を撮影された川瀬美香監督が学校にいらっしゃいました。生徒とともに映画について意見交換をするためです。

この映画は、長崎で郵便配達中に被爆した谷口稜曄(たにぐちすみてる)さん(1929-2017)と英国人作家ピーター・タウンゼントさん(1914-1995)の交流を追った映画です。

核兵器廃絶運動の象徴的存在だった谷口稜曄さんの足跡をたどるドキュメンタリー映画で、8月5日から全国公開されます。

https://longride.jp/nagasaki-postman/

生徒たち16人は、事前に映画を鑑賞して座談会に参加しました。中等部1年~高等部2年までの生徒が映画について感じたこと、自分が考える平和とは、誰にこの映画を見てもらいたいかなどを川瀬監督と語り合いました。

高等部1年の生徒は「兵隊ではない、ただの郵便配達員だった谷口さんが戦争の悲劇に遭ったことを知りました。海外の人の視点から日本の戦争体験を描いていることが新鮮でした」と話しました。

また話題は自然とロシアのウクライナ侵攻にも関連していきました。平和とは何だろうか、というテーマでは、「勝手に作られるものではなく、一からつくりあげるもの。自分たちでつくるもの」という言葉が出ました。

郵便配達のように「平和を送る、送り合う」ことの大切さをメッセージとして受け取った生徒もいました。

別の生徒は、「教科書だけではないことを知ることができました。タウンゼントさんの娘イザベラさんが父の書斎に残っていたメモを見つけたのを機に父との関係を探りはじめ、第一次大戦、二次大戦のことを知ろうとしたこと。長崎の関係者を実際に訪ねて歩いたこと。朝の連続テレビ小説(NHK)等でもよく戦争はテーマになるけれど、どれも日本人がメイン。海外の人がこの映画では出てきたので新鮮でした。歴史を学ぶ意味も考えさせられました」とも。

川瀬監督からは「みなさんは英語のニュースを見てますか?」との言葉がけもありました。日本の報道だけを見ていたのではわからない世界があります。

映画作りの際も言語は大きく影響するといいます。日常生活ではフランス語、英語を話すイザベラさん(タウンゼントさんの娘)ですが、監督は、この映画が日本以外の人に伝わることを強く希望して「英語」にしたそうです。

言語は大事ですね。

そして対話が必要。高等部2年の生徒は、「お互いの立場抜きで当事者の自分たちで話したい、と思えることがすばらしいと感じました。」と話していました。

生徒たちの目を見て、一心に聞いていた川瀬監督。会話の後に「ひとつひとつ自分の言葉で話してくれて、どうもありがとう」と、生徒に伝えていた川瀬監督のことばが重く感じられました。

最後に生徒たちは、今の気持ちを「〇〇さんへの手紙」という形で書き残しました。ある生徒は、戦争で亡くなった会ったことのない「ひいおじいちゃんへ」、ある生徒は「谷口さんへ」思いをつづっていました。誰もが戦争を経験した身内をもっています。自分とつながる人があの時どう感じていたかを知ること。そして少しでも意志を持って動くこと、自分に何ができるかを考えようとすること、を感じました。かくいう私の伯父が書いた「戦争体験の手記」のコピーもいま本校の図書館内で展示中です。ある疎開児童が広島の原爆投下の時何を感じたか、興味のある人は読んでみて下さい。

これから9月に学習体験旅行で実際に長崎に行く高等部2年生と、来年3月に訪れる高等部1年生にとってはこの「長崎の郵便配達」映画は、自分と対話するきっかけになったのではないでしょうか。

図書館でも書籍リストを作りました。近くの図書館や学校図書館で手に取ってみてはいかがでしょうか。

「長崎の郵便配達」関連リスト1 「長崎の郵便配達」関連リスト2

この意見交換会についてはいろいろなメディアでも紹介される予定です。2022年7月23日朝日新聞(朝刊)の東京版にも掲載されました。8月5日封切りのこの映画をぜひご覧ください。

(記録 二井)